CASE

症例紹介

case13.高悪性度腎リンパ腫の治療にLaverdia(ラベルディアを使用した症例

Laverdia(ラベルディア)とは海外で犬のリンパ腫にのみ認可がおりている分子標的薬(抗がん剤)です。まだ日本では使用例が少ない今回紹介したいと思います。

患者さんの情報

7歳のボーダーコリー

去勢済み雄

多飲多尿とパンティングを主訴に来院されました。

来院時の体重:20.78kg

検査

まず血液検査では、多血症と軽度肝酵素上昇が見られましたが、腎臓の数値は問題ありませんでした。

尿検査では、重度の高蛋白尿症がみられ、尿蛋白クレアチニン比(UPC)も高値でした。

以下に血液検査の詳細を載せます。

次にエコー検査を実施しました。以下に画像を載せます。

通常、この体格のわんちゃんの腎臓の大きさは、平均6.5cmになります。この子の左腎の大きさは6.97cmと腫大していました。また、腎臓周囲に極わずかな腹膜炎所見もありました。

まずはテルミサルタンというたんぱく尿を改善するお薬で経過を見ましたが、改善が見られなかったので、2週間後に腎臓の細胞診検査とクロナリティー検査を実施しました。

結果は、T細胞性低分化型リンパ腫という診断でした。多血症は、腎臓リンパ腫による腫瘍随伴症候群であることがわかりました。

治療

 検査の結果を踏まえて飼い主さんと相談した結果、Laverdia(ラベルディア)とプレドニゾロンの併用で治療を開始することになりました。

Laverdiaは1.25mg/kgの投与量で週に2回経口投与をします。

経過

治療を開始してから、原因不明の慢性進行性貧血と肝酵素の上昇が見られましたが、貧血を改善する内服薬と強肝剤を追加し、Laverdiaとステロイドを減量することで症状は改善していきました。Laverdiaによる副作用も考えられたため、その後約2週間Laverdiaの内服を中止しましたが、血液検査の結果が安定したところでLaverdiaの内服を再開しました。

通常リンパ腫の抗がん治療(UW25)で使用する注射薬では嘔吐、下痢、食欲不振などの消化器症状がみられますが、今回のLaverdiaではその後大きな副作用もなく経過良好です。

現在、治療開始から2か月経ちましたが、体調と血液検査上特に問題なく経過しています。エコー検査上でも病変は消失し、腎腫大も改善されている状態です。こちらがエコー検査画像です。

Laverdia(ラベルディア)

今回は、犬の高悪性度リンパ腫に対してLaverdiaを使用した症例でした。まだLavedriaを使用している病院さんは日本ではほとんどありません。リンパ腫すべての症例で適応になるか等まだわからない点もありますが、抗がん剤の選択肢の1つとして紹介させていただきました。ご自宅での投薬治療が可能であり、副作用が軽減された点はメリットかと思います。今後の経過もブログでご報告させていただけたらと思います。

お薬の詳細

Laverdiaとはは、海外で犬のリンパ腫にのみ認可がおりている経口の抗がん剤です。

こちらの抗がん剤のメリットは、一般的に使われる注射による多剤併用プロトコルで用いられるオンコビンやシクロフォスファミド、ドキソルビシンなどでみられる骨髄抑制や下痢嘔吐などの消化器毒性が見られにくいことです。

犬の報告では、重篤な副作用はほとんどみられず、対症療法で改善する程度の副作用だったという報告があります。また、経口薬なので自宅での治療が可能です。

デメリットは、まだ日本での使用例が少ないため情報がすくないことです。

用量用法は、犬初期投与は1.25mg/kg 週2回(72時間はあける)で2週間投薬します。そこで副作用がなければ、1.5mg/kg 週2回に増やして継続します。

もし副作用が見られた場合は、1mg/kg 週2回に減量します。費用は、例えば5kgの子の場合、1回の抗がん剤費用が約3000~6000円(税込)になります。この費用の他に検査代や調剤代がかかります。