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FIP治療

FIP(伝染性腹膜炎)とは?

FIP(猫伝染性腹膜炎)とはどんな病気?

FIPは、FIPウイルス(FIPV)による致死性の感染症です。
FIPを発症すると、文字通り腹膜炎や胸膜炎を起こす、あるいは、肝臓や腎臓、脾臓、小腸といった部位に腫瘍ができたり機能障害が起きたりするといった様々な症状を示します。
特に2歳未満の子猫での発症が多く、高確率で短期間のうちに亡くなってしまう病気です。

FIPの3つのタイプ

FIPには大きく分けて「ウェットタイプ」と「ドライタイプ」と「混合タイプ」の3つがあります。

ウェットタイプ

ウイルスによって腹膜炎や胸膜炎が起きた結果、お腹や胸に水(腹水、胸水)が溜まるタイプのFIPです。腹水がたまればお腹がポテっと膨らみますし、胸水が溜まれば肺が圧迫され呼吸が苦しくなります。腹水だけ、胸水だけというケースが多く見られますが、両方が溜まることもあります。また、心臓の周りに水が溜まってしまい、血液の循環を邪魔してしまうこともあります。

ドライタイプ

もうひとつが、水が溜まる症状のないドライタイプです。肝臓や腎臓、脳、眼など様々な臓器に異変をきたします。よって、症状もその臓器によって異なります。なお、ウェットタイプは発症すると短期間で死亡するケースがほとんどです。一方、ドライタイプのFIPでは慢性疾患になりつつも、比較的経過が長くなる場合もありますが、致死性の病気であることに変わりはありません。しかし、子猫、特に2歳未満の場合はドライタイプでも神経症状を起こし、即死に至る例もあります。

混合タイプ

ウェットタイプとドライタイプ両方の要素を持ち合わせたタイプです。あるいは、病状が進んでいるにもかかわらず腹水や胸水が少ないタイプもこの混合タイプに含まれると考えています。

FIPの症状

下記が初期症状と進行した症状です。
ウェットタイプとドライタイプの両方を発症する猫もいるため症状は多岐にわたり、目に見える異変やひとつの症状だけではFIPかどうか判断するのは困難です。

初期症状
・抗生物質では下がらない発熱
・食欲不振、体重減少
・元気がなくなる
進行した症状
・粘膜の黄疸や蒼白
・腹水によるお腹のふくらみ
・胸水による呼吸困難
・神経症状(発作や知覚過敏、運動失調など)
・眼の症状(目の白濁や充血など)

FIPの原因は?

FIPの原因は、はっきりとはわかっていません。FIPは「猫腸コロナウイルス」が突然変異をおこしたウイルスによって引き起こされる病気です。
猫腸コロナウイルスはほぼ全ての猫が感染するものです。しかし猫腸コロナウイルスを持っている猫が全てFIPを発症するわけではありません。腸コロナウイルスを持っていても、多くの猫は無症状です。
問題は、猫腸コロナウイルスが突然変異して「FIPウイルス(猫伝染性腹膜炎ウイルス)」に変化してしまうことです。
猫伝染性腹膜炎ウイルスは非常に強い毒性を持っているのです。
猫腸コロナウイルスのうち、1割がFIPウイルスに変異すると言われています。
また、生活上でのストレスや他のウイルスの感染で免疫力が下がってしまうことも関係していると考えられています。

FIPの予防・治療方法

実は、FIPにはまだワクチンが存在していません。そのため、日頃から猫ちゃんの体調の変化や、FIPの初期症状に飼い主さんが気づくことが大切です。
また、治療については対処療法が主流でしたが、近年、有効性が期待される薬品も開発されています。
FIPはまだ不明な部分が多く、診断も難しい病気ですが、猫ちゃんの異変に気づいたら、早めに病院に相談してください。早期発見・早期治療で助けられる可能性も出てきました。

FIP(伝染性腹膜炎)の検査と診断方法

FIPは、外見に出る症状は非常に多岐に渡っています。しかし「FIPにだけ見られる症状」というのがないという特徴があります。
よってFIPの診断は、こうした症状の有無に加え、猫ちゃんの年齢や飼育背景などを加えて総合的に判断していくことになります。

身体検査
身体検査

まず最初に行うのが身体検査です。
体温測定、体重測定、脱水の有無、目の観察、神経学的検査などで異常があるかどうか確認します。

血液検査
血液検査

血液検査では、主に以下のような項目をチェックします。

CBC(血球数算定検査)

FIPの猫ちゃんで貧血やリンパ球の減少がよく見られるほか、白血球(とくに好中球や単球)の増加が見られることもあります。ただ、リンパ球の減少はストレスでも起きる反応ですから、これだけでFIPとは断言できません。

生化学検査

血清中の成分を分析します。FIPの猫ちゃんでは、高蛋白質血症がよく見られます。蛋白質の中でも、グロブリンが増加し、それに伴うA/G比(アルブミン/グロブリン比)の低下がみられます。また、肉芽腫性肝炎や腸の肉芽腫性変化が起きたり、血管炎で腹水や胸水が貯溜したりしている場合はアルブミンの濃度が低下します。
FIPの猫ちゃんではA/G比が最適値より大きく外れがちです。

抗体検査

体内のウイルスの有無を調べます。ただ、低い抗体価でも発症する場合や、高い抗体価でも発症しない猫ちゃんもいます。また、ほとんどの猫ちゃんは、強毒化する前のFCoV(猫コロナウイルス)に対する抗体を持っていますから、抗体の有無だけでFIPとは決められません。しかし抗体価が極端に高く、かつ他の臨床症状もある場合はFIPである可能性が出てきます。

体内に貯溜液がある場合

腹水や胸水が溜まっている場合は、これらの水を採取して検査を実施します。貯溜液はFIPかどうかを診断する重要なサンプルです。FIPの猫ちゃんの場合、液体は明るい黄色でねばねばしており、蛋白質濃度が高く、比重が高いという特徴が現れます。
また、必要に応じて脳脊髄液の検査を実施することもあります。

画像検査
画像検査

神経症状がある猫ちゃんの場合は、MRIやCTによる画像検査も情報収集の手段になります。ウェットタイプのFIPを発症している猫ちゃんでは胸水や腹水が見つかりますし、ドライタイプの猫ちゃんの場合は腹腔内にしこりのようなものが見られる場合があります。
また、特徴的な脳炎の所見があったり、脳脊髄液の増加による脳圧上昇、水頭症所見などがわかります。
超音波検査では、臓器に腫瘤などの異変がないかどうかを見ることができます。

病理組織検査、免疫組織化学染色
病理組織検査、免疫組織化学染色

内蔵などの組織の一部を取り出し、状況を確認するのが病理組織検査です。FIPが疑われる猫ちゃんの場合、血管炎や肉芽腫が見つかることがあります。
また、免疫組織化学染色は、抗体を使って組織内のウイルスを検出する検査ですが、抗原になるウイルスが検出されなくてもFIPの可能性を全否定することはできません。
ただ、他の検査でFIPが疑わしくなかったとしても、病理組織からの免疫染色で陽性反応が出れば、FIPの線が濃厚になります。

PCR法
PCR法

腹水や胸水を採取しPCR方法を用いることでウイルスを検出することができます。血液や糞便、脳脊髄液、腹腔内腫瘤、腎臓、肝臓、リンパ節、眼房水を採取することもあります。
胸水や腹水からPCRでウイルスが検出されなかった場合はFIPである可能性は低くなります。
しかし、その猫ちゃんがどの程度FIPの要素を持っているかによっては必ずしもPCRの結果が有用とは言えない場合があります。

FIP(伝染性腹膜炎)のお薬と代金

Xraphcon(以前のMUTIAN)

内服で投与する場合
用法:1日1回、食餌2時間前(投薬後は絶食1時間)、84日間継続容量:100~200mg/kg
容量:100~200mg/kg
メリット:注射薬に比べて安い、自宅で治療できる
デメリット:重症な場合は改善が見込めないこと、副作用(耳折れ、脱毛、肝酵素上昇、下痢など)があること

費用
体重2kgの子の場合、4800〜9600円/日です。金額に幅があるのは、病態により投薬量が変わるためです。
注射での投与する場合
用法:1日1回、皮下注射、84日間継続
容量:0.3~0.6ml/kg(状態が悪ければ増量も検討)
メリット:食事のタイミングと関係なく投与でき、効き目が早い
デメリット:同じ場所に長い期間注射していると、注射部位の潰瘍や肉腫になる可能性がある

費用
体重2kgの子の場合、入院下で注射する場合は9900〜19800円/日(注射代別)、自宅で注射する場合は7920〜15840円/日(注射器代別)です。金額に幅があるのは、病態により投薬量が変わるためです。

Xraphconだけにしかないメリットは「延長補償」と「再発補償」があること です。

もし、投薬終了時に検査などに不安が残り、投薬を延長しないといけない場合、その延長投薬にかかるXraphconの費用がすべて免除されます。また、84日間投薬した後にFIPの症状が1年以内に再発した場合、Xraphconの再投薬にかかる費用がすべて免除されます。当院では、他院さんでXraphconの投薬治療していて再発した場合でも、補償対象にしております。

モルヌピラビル

用法:1日2回、食前食後1時間は投薬しない、シロップで内服、84日間継続
容量:10~20mg/kg
メリット:値段が安い
デメリット:WBC減少、催奇形性、発がん性、下痢、肝酵素上昇など

費用
2kgの猫ちゃんで1日あたり552~1104円(税込)です。金額に幅があるのは、病態により投薬量が変わるためです。

当院では、とにかく命を助けることを一番に考えた上で、
飼い主さんの要望に合わせて治療プランを提示しています。

病状や予後によってはイレギュラーな治療になる場合も多々ありますが、
どの子にも一辺倒な投薬をするよりかは良いと考えています。

FIPの治療でお困りの方は、当院までご連絡ください。

電話予約
TEL:045-710-0447
9:00〜12:00/15:00〜18:30受付